あ、ハーレーだ。と、普通の人なら誰もが思うだろう。ワシも、一瞬そう思うもん。で、よく見るとこれがヤマハだったりするのだ。あ、もちろんこれはちょっとオーナーさんがハーレー風カスタマイズをしているけど、そういうカスタマイズをしてもらおう、という姑息な設計をも含めての話ね。
昔、日本の工業は、欧米製品のコピーからスタートした。メグロはトライアンフをコピーし、陸王はハーレーをライセンス生産。BMWもノートンもツンダップもDKWも、とにかく諸外国の二輪車は、みんなコピーされた。スタイルそのものからパクリってのも多かったけど、部品レベルならもっとすごくて、ヤマハの初4サイクルエンジンだった2気筒650のピストンはポルシェと共通部品、なんてウワサもあったなあ。こういう状況はもちろんバイクだけじゃなくて、クルマも欧米のクルマからデザインやアイディア、システムをパクったりライセンス生産していたし、エンジンとかになると、もうほとんどそのまんま、なんてのを積んでたりしたのだった。カメラだってキヤノンはライカを、ニコンはコンタックスをほとんどそのままコピーしていたしね。まあそんなわけで、ちょっと前の韓国や、そしていまの中国の自動車産業を笑える日本人は、どこにもいない。
しかしこれは、そんな混沌と黎明の時代の製品ではない。そしてハーレーダビッドソンは、ギリシャのパルテノン神殿や宇治平等院と違って、その意匠を自由に取り入れてもかまわないほど過去の文化財ではない。このショベルヘッドのプッシュロッドカバーを模したパイプの中には、ナニが入ってるんだろう。十数年前だったかモーターショーの二輪車館で、ズラリと国内4メーカーが並べたハーレーのバチモンを前に、こんなにみんなでハーレー作ってどうすんのよ、とメーカーの人に聞いたら、「我々はハーレーを作ってるんじゃなくて、ライダーが望むアメリカンバイクを作ってるんです」と答えたのだった。
模倣で得た技術で安く大量にバイクを作り、欧米の二輪メーカーの大半を廃業に追いやった日本の二輪メーカー。だったら彼らがいまやるべきことは、かつてない、まったく新しいアメリカンバイクを創造することぢゃないのか。こんなハーレーみたいなのは、ハーレーにまかせておいて、さ。そうしないと、あっちゅー間に中国のメーカーに駆逐されちゃうよ。