ワシはラジオで音楽を覚えた人間なので、ウチの店(BOTCHY BOTCHYである)に多い、音楽漬けの青春を過ごしたみなさんのように、バックの演奏者のことなどさしたる興味も持たず、流れてくる音楽を聞いていた。では、なぜ吉川忠英の名を知っていたかというと、このひとが、日本のフォークシンガーのレジェンドの一人だからである。中島みゆき、松任谷由実、さだまさし、イルカ、矢野顕子、太田裕美、山口百恵、松田聖子、ZARD、大滝詠一、福山雅治、夏川りみ、加山雄三、Chageなどなどの、名曲の数々で、実はこのひとがギターを弾いていたことを知ったのは、実は比較的最近のことなのだ。
そんな忠英さんが、寒川のギターサークルの先生との縁があって、BOTCHY BOTCHYでライブしてくれた。圧倒的に豊潤な、ギターの音色。繊細にして正確無比にして大胆な、指使いとピッキング。聞いていた評判とか、想像とか、そういうものを超えた、とかではなく、別次元のギターと唄だった。そして強く印象に残ったのは、ひとつひとつの言葉を大切に、響く声でしっかり歌を唄う、ボーカリストとしての忠英さんだ。ああ、このひとは歌唄いなんだな。他の誰よりもギターがうまいという、とんでもないオマケが付いているだけの。