貨物列車が通り過ぎていくところだった。タバコに火をつけ、吸い終わると、最後の一両が通り過ぎた……。
ライ・クーダーのGo Home, Girlが聞こえてくる、あのCMである。
なんだろう、なぜかわからないけれど、昔から、荒野が好きなのだ。子どものころ、親父と一緒に何度も見ていた、ウエスタン・ムービーに刷り込まれたのかもしれない。片岡義男さんの小説、ロンサム・カウボーイが、すとんと心に落ちた。
そして70年代の終わりころに登場した、パイオニアのシステムカーコンポ、ロンサム・カーボーイ。カウボーイではなく、Car-boy。でも、商品名はたぶん、片岡義男のロンサム・カウボーイから持ってきたに違いない。その証拠に、ラジオから流れるコマーシャルの朗読は、なんと片岡義男さんの、あの声。そしてコピーはロンサム・カウボーイの世界観そのものだったし、テレビCFではウォーレン・オーツを荒野に立たせていたもんな。そしてBGMは冒頭にも記したライ・クーダーのGo Home, Girl。もう、夢見ていた世界と、ドンピシャだった。もう、自分で確認せずにはいられなかった。
1980年。何時間走っても同じ景色が続く荒野を抜けて、やがて現れるなんでもないアメリカの田舎の町を通り過ぎ、写真を撮って旅した日々。そして、2025年。
「人は変わり、街は変わった。荒野では何も変わらない」(Lonesome Car-boy CM)
ホントに貨物列車が走ってきた。た、タバコに火をつけなくちゃ。
前3機に、最後尾にプッシュ1機。
しかも、そのすぐ後ろには、もう1編成、貨物列車が後続している。
しかもこっちは、前の編成よりさらに長い。荒野の踏切で貨物列車の通過を待ってたら、タバコが2本必要だったかもしれない。吸わないけど。
どっちの編成も、機関士さんが汽笛をリズミカルに鳴らして挨拶してくれる。鉄道好きは万国共通か。デニーズでメシ食った、すぐ近くのバーストゥには、国家歴史登録財になってる古い駅舎や巨大な貨物ヤードがあったり、鉄道博物館とかルート66博物館もあったりするんだよなー。このあたりに一泊したかったなあ。
120マイルを過ぎると、エンジンの音だけでは寂しすぎる。そんなカーコンポのキャッチフレーズだったけど、LAのダウンタウンからキャリコまで、まさに120マイルちょっとを弾丸で往復。まったく寂しくない。この旅は、ワシ的にはユーミンのナビゲイター、かな。