9年ぶりに、淡島のゴッホに行った。

目黒区の青葉台を皮切りに、大橋や東山あたりをウロウロ、引っ越しを繰り返しながら住んでたころ、そりゃまあよく、ここでカレーを喰ったものだ。自分でも行き、誰かに誘われれば行き、誰かが来たら行き、そして行ったら必ず誰か友だちが、そこでカレーを喰っていた。

カウンターで、そしてこの小さな三角のテーブルで、カレーライス(おっと、ここんちはカリーライスだ)を食べながら、みんなといろんな話をしたなあ。ま、いろんな話といっても、あんまり色っぽい話なんかはなくて、パソコン通信だとかコンピューター、そしてクルマやバイクなど、オタクな話ばかりだった。そもそもこの店の2階は、オタクの総本山、コミケの事務局だったし、そこに集う人たちの主食も、もちろんここんちのカリーライスだったのは言うまでもない。

メニューも、普遍の定番から、ときおり飛び出すウルトラCから超弩級メニューまで、いろんなものがあったし、おそらくは全制覇してたんじゃないかなあ。伊勢海老カレーはすごかったよね、2000円だったっけ、とか昔話をしてたら、いや、2000円だったのはサーロインステーキカレーですよ、と横から教えてくれたのは、なんとコミケの共同代表のひとりだったりするのだ。もちろんいまやでかくなったコミケは、ここの上にはいないけど、引っ越しても食べに来てるのだ。主食だからな。
元香料の調合師だったマスターだけに、スパイスの調合もきっとお手の物なのだろう。出されるカリーライスは、まさに、ここだけの味。ここでなければ喰えない味。ユニークという言葉を、「他に類を見ない」という正しい意味でドンピシャに使える、希有なカレーで、ワシがカレーでもっとも重視する価値観だ。しかしそんなマスターも、もう73歳。そりゃ、もういいや、と思うよなあ。ちなみにほかにどこがユニークなんだと言われたら、ワシは迷わず、大阪のインディアンカレーを挙げるね。

これは、ビーフのカリー。ここんちにしては珍しく、カレーライスがちゃんと、ごはんにルーがかかったように見えるシンプル方向のメニューで、ワシが一番オーダーしなかったタイプでもある。(^^;;

一方、こっちはたぶん、ワシがここんちでいちばん多く喰ったと思われる、肉いっぱいカリーに、今日はポークカツをトッピングした。ワシがよく行ってたころは、カツカレーは一口カツがいくつか乗ってて、そこに刻んだ海苔を振りかけているのが絶妙のうまさだったんだけど、いまはトンカツのように切ったカツをルーに和えるようだ。もともと鶏の唐揚げがゴロゴロしてるところに、トンカツ1枚加えて、どんだけカロリー摂取したいんだ、っちゅーメニューだけど、これがもちろんペロリといけちゃう。むしろ2杯喰える。

カリーとコーヒーの店というだけあって、コーヒーもウマイのだ。サイフォンで入れてるのを見てると、とてもそんなにうまいのが抽出されてるようには見えないんだけど、なせかウマイのだ。やっぱ結局、ひとことで言っちゃえば“センスがいい”んだろう。mixiにコミュニティができた(誰が作ったんだっけ)という張り紙が懐かしい、まさにカレーの名店ゴッホは、とうとう7月23日を最終営業日に、歴史に幕を下ろす。たぶん、それまでにワシはもう一度、きっと淡島へ行くだろうが、ワシの、かけがえのないカレーが、ひとつ、消え去ることになる。実に悲しい。しかーし、ココだけの話だけど、なんとマスター、レシピを教えてくれるというのだ。たぶん半年くらいの休養の後、マスターからの連絡があったら、どこかで、なんらかの機会に、この味が復活するかもしれない。( ̄ー ̄)

Author: shun

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